1.経緯

私が経験した事例です。

 思ってもみない相手から、債権全額弁済の催告(ローンがあるから払ってね)があったことを子供宛ての手紙で知りました。もちろん開封は子供の許可をとってからです。相続においては、民法で規定されています。自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純もしくは限定の承認または放棄をしないといけません。思ってもみない相手から債権全額弁済の催告があったのですから、やはり怖いというのが正直な気持ちです。この他にもあるのではないか、と先が見えないことに不安を隠せません。

 でもなぜ私の子供に?
 亡き妻の実親が亡くなり、子供が相続人に。
 これが代襲相続です。
 また債権全額?
 それは亡き妻の兄弟全員が相続を放棄したからだと思います。

 遠くで勉学に励む子供に、催告の内容を伝えました。放棄することが最善の道とお互いに納得しました。このときが民法でいう『相続の開始があったことを知った時』だと認識します。

 まずはネットで検索し、裁判所のホームページから放棄はどのような手続きをするのか、どこに申述するのかを確認しました。
 相続放棄申述書と申述人(相続人)の戸籍謄本、被相続人(亡くなられた方)の戸籍謄本等(除籍簿)や住民票の除票、あとは収入印紙、切手、申述人の認印となっていました。そして申述書の提出先は、被相続人(亡くなられた方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となっていました。
 本来なら司法書士さんにお願いするところですが、幸いにも時間がありましたので私自身で動くことにしました(このときはあまり時間がかからないだろうと)。そのときの行動を次に掲げます。

2.行動

(1)事前の情報収集
・債権者へ連絡し方向性を伝える(子供の意思である放棄を伝える)
・被相続人(亡くなられた方)の情報を関係者に聞き取りする(現住所や最近の状況、関係者の相続の状況)

(2)知り得た情報
・亡くなられた方の現住所
・どのような生活状況だったか、だいだいの情報
・関係者の相続状況(兄弟は相続放棄していた)
・申述書を提出する家庭裁判所の所在地

(3)知り得た情報をもとに書類等を取得
・当該家庭裁判所に電話し、ネットで調べたことを再度確認
・ネットから戸籍証明書等の交付請求書を印刷し、子供に送付。請求者と委任状に記入、押印して返送してもらう

〈休暇1日目〉・・・私の本籍地へ
・子供や亡き妻の戸籍・除籍謄本を取得

〈次週休暇2日目〉・・・私の住む住所地へ
・当該家庭裁判所へ訪問し申述書と記載例と説明を受ける
・役所へ訪問し亡き妻の戸籍・除籍謄本を取得
・子供の住民票の取得・被相続人(亡くなられた方)の戸籍謄本と住民票除票を取得
 このとき被相続人が他県の生まれであることを知り、他県の当該役所への発行依頼(郵送)
・子供へ相続放棄申述書に申述人の署名押印と申述人記載をしてもらうため何部か郵送
 2日目を終了した時点で、思いの他、時間がかかることを知りました。その後、他県の当該役所から私の戸籍の写しがほしいと連絡がありFaxにて対応。その週で子供からの申述書と他県の当該役所から取り寄せた戸籍謄本等が揃う。

〈その翌週休暇3日目〉・・・私の住む住所地へ
・再度当該家庭裁判所へ訪問し、提出。
・裁判所からの説明では、本人宛てに照会書を送付します。その照会書にはいくつかの質問事項があり、回答して返送してください。問題がなければ、相続放棄申述書受理通知書が郵送され、相続放棄が認められます、とのことでした。

3.結果

 書類が手元に届いたのは、相続の開始を知った時から約3ヶ月でした。でも相続放棄申述受理通知書の受理した日付は、相続の開始を知った時から1ヶ月半後でしたので民法に規定されている『相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければならない(第915条、第938条)』を守ることができました。
 
 これは約10年前の事例です。知識があったからこそできたことだったと思います。もし知識がなく、そのままにしておいたら大変なことになりかねませんね。また、私の場合は、戸籍等の調査、取得で3日間(週またぎで)という時間を費やしたことは私に時間があったからできたことだと思います。お仕事を持っている方はなかなかそうもいきませんよね。
 
 やはり専門家である司法書士さんにご相談し、早めの対応が一番だと思いました。
 
 上記のように3日間という時間を費やし、不安のまま過ごすことになりかねませんね。また期限に遅れたりしたら、さらに難しくしてしまうのではないでしょうか。もしこのような事例があった場合には司法書士さんへご相談することをおすすめいたしますし、ご紹介いたします。